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令和2年3月11日 春の気配

寒さが少しずつやわらいでくると、まるで春の姿を見つけたかのように心が弾みます。
四季の中でもとくに厳しい冬の後に訪れる春は、生命の息吹がもたらす美しさと喜びに満ちていて、私たちの祖先はその光景を暮らしの中で表現し、神話として受け継いできました。
たとえば、日本には春の女神さまが存在することをご存知ですか?
その名は「佐保姫(さおひめ/さほひめ)」。奈良の都、「佐保山」に宿る女神さまです。

春の女神「佐保姫」

 日本の神道は、古代中国に端を発する自然哲学である「五行節」の影響を強く受けていますが、「五行節」では季節に方角があり、「春⇒東」「夏⇒南」「秋⇒西」「冬⇒北」とされています。

奈良に都があった時代、平城京の春の方角である東に「佐保山」という春霞の美しい山があり、ふもとを流れる「佐保川」は桜の名所としても知られていました。そこで「佐保山」に宿る神である「佐保姫」を春の女神と呼ぶようになりました。

「佐保姫」は白い春霞や春の花々を身に纏うとされ、春の季語としてたくさんの和歌に詠まれているほか、いまでは和菓子の名称にもなっています。

 

ライバル(?)は「竜田姫」

 

東にある佐保山の神霊が春の女神なら、西の山には秋の女神がいます。平城京の西に位置する「竜田山」の神霊「竜田姫」です。

竜田山はふもとを流れる竜田川をふくめ紅葉が美しく、その神霊は秋の女神にふさわしいとされています。「佐保姫」が春の季語であるように、「竜田姫」もまた秋の季語となっています。
女神とは関係ありませんが、お馴染みの「竜田揚げ」の由来が、竜田川に紅葉が浮かんで流れるさまの色彩に例えられたという話はよく知られています。

 

 

春霞の薄衣を纏った「佐保姫」が微笑むと桜が次々とほころび、「竜田姫」が袖を振ると山々が黄金に染まる。そんな比喩をされることも多い二人の女神たち。
豊かで美しい表現を目にするたび、山や風などあらゆる自然に神が宿ると考える神道の哲学や、神話が伝承されることの趣深さをあらためて感じます。

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